嘆きの断片
「俺たちは、生きる場所を見つけた」

 それだけなんだ。たったそれだけの違いで、あいつは魔物になろうとしている。

「こっち側とあっち側じゃあ、見えてる世界は違い過ぎらあな」

 室田はつぶやいたパーシヴァルに目を向ける。

 こいつらは一体、どんな風にしてその場所にたどり着いたんだろう。俺なんかでは想像も出来ない道だったんだろうか。

「苦労したんだな」

「あん? まあな」

 何を想像したんだこいつと室田を見下ろす。

 感じ方なんてそれぞれだ。俺が辿ってきた道は、他人(ひと)によっちゃあ、大したものじゃないだろう。

 大抵の奴は、自分の過去を口にはしない。自慢するようなもんでもないってのが一番だが、それを糧にするにはあまりにも暗い部分があるからだ。
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