嘆きの断片
「なんだよ。ありゃあ」

 室田はその光景に息を呑んだ。

 燦爛(さんらん)たる光の剣を携えた姿は神々しく、凜とした瞳には揺るぎない精神が宿っている。

「あれが、本当に人間なのか」

「お前は見える人間だから、そう思うのさ」

 見えない奴の目には、そこまで輝いては映らないだろう。

 ──石動の爪はラクベスを引き裂こうと容赦なく襲いかかる。ラクベスはそれを剣で受け止め、隙を狙って一気に踏み込んだ。

 そんな攻撃を爪でかわされるも、剣を振るうその度に、石動の纏(まと)う黒いもやが払われていった。

 それに対抗するように、石動は再び黒いもやを形成し姿を隠す一進一退の攻防が続いている。

「そう簡単には負けちゃくれねえか」

 パーシヴァルは苦々しくつぶやく。
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