嘆きの断片

 ──幽体を飛ばした男は、先ほどの住宅街に到着し精神を集中する。

 魂の一部を肉体から分離することで自在に飛び回り、目的のものを捜し出す。

 彼はそのためにここに来た。

「さあて。どこだ?」

 肉体でいるときよりも感覚は鋭く、物理的なものを無視できるため、捜し物にはうってつけの能力だ。

 ふいに、強い負の気配を感じてそちらに向かう。

 幽体から見える景色はどことこなく揺らぎがあり、この世界とは違う次元に片足を突っ込んでいることが解る。

 黒い影が角を曲がり、それを追って同じく曲がる。

「なに!?」

 影は目の前にいて、驚く男に襲いかかった──



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