嘆きの断片
参ったな。降ろしている神霊のせいでラクベスの性格が荒くなっている。常に紳士的な態度である奴だけに、この豹変は知らない奴が見ればどうしたのかと驚くだろう。

 ラクベスの力量を見定める案件として器用した要請であったが、予想を超えて厄介な内容だ。

 試験は別の要請にして、この件は普通に受けていれば良かった。

「いいから、ちゃっちゃと済ませろよ」

 ラクベスはそれには応えず、ともかく石動の姿を捉えようと黒いもやを払うことに専念した。

「お、見えてきたぞ」

 室田は、徐々にその姿を現した石動に目を見張る。もやが晴れていくにつれ、這いつくばっていた体勢は人間本来の立ち姿へと戻っていく。

 すっかりもやがなくなり、ラクベスが攻撃を止めると石動もその動きを止めた。




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