嘆きの断片
「この世界は先人たちの戦いと、死のうえにあるのですから」

 だけれど、先の責を今の人々が負う必要はない。同じ過ちを繰り返さないための教訓にさえ出来れば、それでいいと私は思っています。

「だからなんだ」

 そんなことで、オレの怒りと憎しみを消せるとでも思っているのか。

 願いはただ一つ。世界の全てが不幸になればよかったんだ。皆が闇に墜ち、その苦しみに悶えていれば満足だったんだ。

「それらを理解したうえで、あなたは己の心のやりどころを見つけなければならなかった」

 こんなやり方では、誰にも救いはなく。ただ自分を追い詰めてさらなる苦しみに墜ちていくだけです。

「やりどころだと? そんなもの、ある訳がない」

「そうでしょうか。あなたは闇に墜ちてもなお、作る事を止めなかった」

 止めなかったのは、一人でも多く不運を背負う者がいればと思う意識だけでしょうか。
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