嘆きの断片
「すでに、あなたの店に足を向ける者がいなくなっても、あなたは作り続けていた」

 幸運のストラップを手にしたとき、私が考えていたほどの力は、そこからは感じ取れませんでした。

「棚にある衣服には、痛いほど強く感じていたのに」

 石動はそれにハッとした。

「そのときに、まだ間に合うと思いました」

 救いなど求めていないあなたを、救えると──

「余計な、ことを」

「そうです。あなたにとって、私は余計なことをしました」

 そして互いのエゴがぶつかり合い、私が勝ちました。負けたあなたを、自由にすることは出来ません。

「ならば──」

 あなたの残りの人生を、我々に頂けませんか。

 囚われの身となるよりも、我々と共に過ごしませんか。

「なに? どういう意味だ」
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