嘆きの断片
「あなたの能力(ちから)は本来、幸運といった漠然としたものではなく、明確なものを付与する能力なんです」

 そのため、これだけの被害で済んでいたということがある。彼が正しい能力(ちから)の使い方を知っていたなら、ラクベス一人では難しかったかもしれない。

「どういうことだ?」

 室田は、いぶかしげに眉を寄せパーシヴァルに投げかける。

「幸運っていうのは、ハッキリしているようにみえて、実は漠然としたものだ」

 かと言って、それぞれの努力によって成せるものは付与できない。

「試験の合格とかな」

 集中力の持続なら付与可能だ。

「予想外の出来事で合格するってことはあるんじゃないのか?」

 そういうのは幸運と呼べると思うんだが。

「その予想外の出来事を付与する必要があるんだよ」

 難しいなと室田は唸る。
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