人狼王子と獣使い少女
「待ってください……! ジルは関係ありません。どうか剣をおさめてください……!」
クロウが、すかさずジルの前に立ちふさがる。すると先ほどの大男が、クロウの胸倉を掴んで罵声を浴びせた。
「お前、獣人の分際で、リック様に口を利くんじゃねぇ! この方は、エドガー王子の側近なんだぞ!」
大男に引き寄せられた勢いで、クロウの胸もとに提げられていたペンダントの革紐が切れる。フローラに貰ったと、クロウがはにかみながら言っていたものだ。革紐につけられていたサーモンピンクの鳥の羽が宙を舞い、地面に落ちる。そして大男の足によって、ぐしゃっと無残にふみ潰された。
「………!」
大切なものが踏みにじられる様子を目の当たりにして、クロウが声にならない声を上げる。
クロウがきつく牙を噛みしめた、その時だった。
クロウを取り巻く空気が豹変した。
まるで春のうららかな日に、一瞬にして凍てつく寒さの冬が訪れたかのように、それは唐突で異様な変化だった。
肩が小刻みに揺れ、凄んだ瞳で男を睨み上げる。口からは「ウ~」と、普段の彼からは想像もできないような獣特有の低い唸りが漏れていた。
「な、なんだよ。急に……」
どんなにいたぶられても穏やかに振舞っていたクロウの変化に、大男は動揺しているようだった。
「クロウ……?」
ジルも、クロウの変化にただ事ではない気配を感じ取る。
「ウ~ッ、ウ~ッ」
狼のような唸り声を上げながら、クロウが地面に四つん這いになった。アイスブルーの瞳はいつしか金色に変化し、不気味に光っている。
クロウが、すかさずジルの前に立ちふさがる。すると先ほどの大男が、クロウの胸倉を掴んで罵声を浴びせた。
「お前、獣人の分際で、リック様に口を利くんじゃねぇ! この方は、エドガー王子の側近なんだぞ!」
大男に引き寄せられた勢いで、クロウの胸もとに提げられていたペンダントの革紐が切れる。フローラに貰ったと、クロウがはにかみながら言っていたものだ。革紐につけられていたサーモンピンクの鳥の羽が宙を舞い、地面に落ちる。そして大男の足によって、ぐしゃっと無残にふみ潰された。
「………!」
大切なものが踏みにじられる様子を目の当たりにして、クロウが声にならない声を上げる。
クロウがきつく牙を噛みしめた、その時だった。
クロウを取り巻く空気が豹変した。
まるで春のうららかな日に、一瞬にして凍てつく寒さの冬が訪れたかのように、それは唐突で異様な変化だった。
肩が小刻みに揺れ、凄んだ瞳で男を睨み上げる。口からは「ウ~」と、普段の彼からは想像もできないような獣特有の低い唸りが漏れていた。
「な、なんだよ。急に……」
どんなにいたぶられても穏やかに振舞っていたクロウの変化に、大男は動揺しているようだった。
「クロウ……?」
ジルも、クロウの変化にただ事ではない気配を感じ取る。
「ウ~ッ、ウ~ッ」
狼のような唸り声を上げながら、クロウが地面に四つん這いになった。アイスブルーの瞳はいつしか金色に変化し、不気味に光っている。