人狼王子と獣使い少女
最後にジルをもう一度一瞥すると、サンドは身を翻しもと来た方へと戻って行った。


頭を垂れたままのリックの隣で、ジルは長い廊下の先へと小さくなるサンドの後ろ姿を呆然と見送る。


(切り札って、何のこと……?)


エドガーはジルを傍に置きたがり、国を司る宰相までもがジルを必要としている。その理由がさっぱり分からないジルは、困惑を通り越して気味悪ささえ感じていた。


(それにしても、このお城に優しい人はいないのかしら……)


冷徹な第一王子に、乱暴で血の気の多い側近、そして心の内の全く読めない無表情の宰相。


獣人村の人々の温かい笑顔を思い出し、何が何でもクロウとともにここを去らなくちゃと、ジルは改めて決心したのだった。
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