人狼王子と獣使い少女

クロウは綺麗だ。


男の人に綺麗などという表現はおかしいかもしれないが、ジルはそれ以外の表現方法を見つけられない。


しっぽと同じ金色の髪は首の付け根ほどの長さで、柔らかそうだ。頭の上に並んだ狼の耳は、ピンと立っていて凛々しい。


獣人特有の金色の瞳孔、アイスブルーのどこか艶っぽい瞳。鼻筋はスッと滑らかで、唇はいつも優しげな笑みを浮かべている。


「どうした？　僕の素早さに見とれた？」


「そんなわけ、ないでしょ？　ていうかそもそも、クロウが急に脅かすから落としそうになったんじゃない」


赤らむ顔を、伏せるジル。ハハッと爽やかに笑っているクロウは、ジルの動揺に気づいていないようだ。





「ごめんごめん、悪かったよ。ジルを見つけると、ついからかいたくなってさ」


クロウが、ジルの頭をポンと撫でる。


「父さんに町まで買い物に行くように言われたから、誘いに来たんだ。父さんが、ジルも連れて行けって」


「珍しいわね。ランバルドさんは、私にこの村を出るなっていつも言ってるのに」


「こんな田舎にばっかりいるより、ジルもたまには町で気分転換した方がいいって思ったんじゃないかな。町は確かにジルには居心地が悪いかもしれないけど、色々な店があって面白いからさ」