人狼王子と獣使い少女
クロウの言葉に、ジルは固まった。


「……長いの、好きじゃないの」


「そうなんだ。まあ、似合ってるからいいんだけどね」


屈託なく微笑むと、クロウはまたジルの頭をポンと撫でた。


けれどもジルの胸の奥には、じんと焼けつくような痛みが走っている。






ジルは、獣人になりたかった。


クロウと同じように、長い爪にしっぽ、金色の瞳孔に優れた瞬発力を持って生まれたかった。


だから少しでも獣人に近づこうと髪を切っているのに、クロウにとってジルはどう転んでも人間なのだ。








ジルの頭に手を置いたまま、前を見据えるクロウを見上げる。


綺麗なクロウ。彼に、少しでも近づきたい。だけどそう思えば思うほどに、ジルは自分が人間だということを実感して、やるせなくなる。


――こんなにも、クロウのことが好きなのに。


いつからかなんて、もう忘れた。


気づいた時にはもう、ジルはクロウに恋をしていた。



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