人狼王子と獣使い少女
ここシルディア王国は、軍事力、経済力ともに大陸一の規模をほこる大国だ。その歴史は古く、千年余りと伝えられている。
土地は緑が豊かで、水源も豊富だ。郊外では農作物が豊かに実り、都では交易が盛んに行われている。
ことに二人がこれから向かう王都バルザックは、大陸の交易の要なだけあって、一年中人で溢れ返っている。世界一と名高いバザールでは世界各地の特産品が売られ、常に活気に満ちていた。
「バルザックまでは時間がかかるから、寝てていいからね」
器用に手綱を操るクロウに見とれていると、ふいにそんなことを言われた。
もう少しあなたを見ていたいとも言えずに、「うん、そうする」とジルは小声で返事をする。
だが目を閉じていても、隣に感じるクロウの気配に意識がいって、落ち着かない。
少しだけ様子をうかがおうと薄目を開ければ、こちらをじっと見ているクロウと目が合って赤面してしまった。
「どうしたの……? 前、見なくて大丈夫?」
「うん。直線の道だから、大丈夫」
そう言って、クロウは屈託なく笑う。
「ジル、綺麗になったなあって、見惚れてたんだ」
「………!?」
こういった天然気質のところが、クロウは本当に考えものだ。無自覚にした今の発言で、ジルが卒倒しそうになっていることなど、知る由もないのだろう。
土地は緑が豊かで、水源も豊富だ。郊外では農作物が豊かに実り、都では交易が盛んに行われている。
ことに二人がこれから向かう王都バルザックは、大陸の交易の要なだけあって、一年中人で溢れ返っている。世界一と名高いバザールでは世界各地の特産品が売られ、常に活気に満ちていた。
「バルザックまでは時間がかかるから、寝てていいからね」
器用に手綱を操るクロウに見とれていると、ふいにそんなことを言われた。
もう少しあなたを見ていたいとも言えずに、「うん、そうする」とジルは小声で返事をする。
だが目を閉じていても、隣に感じるクロウの気配に意識がいって、落ち着かない。
少しだけ様子をうかがおうと薄目を開ければ、こちらをじっと見ているクロウと目が合って赤面してしまった。
「どうしたの……? 前、見なくて大丈夫?」
「うん。直線の道だから、大丈夫」
そう言って、クロウは屈託なく笑う。
「ジル、綺麗になったなあって、見惚れてたんだ」
「………!?」
こういった天然気質のところが、クロウは本当に考えものだ。無自覚にした今の発言で、ジルが卒倒しそうになっていることなど、知る由もないのだろう。