恋を知った死神の物語
初めまして死神です

死を宣告する者

夜の街にまじる暗く黒い影の男は、協会の塔の上からジッと人間を見つめた。
男は右の後ろポケットから手帳を取り出すとパラパラとページが風にめくられ、そしてあるページで止まった。
そのページを見つめた男は不気味に笑みを浮かべると手帳を閉じ、ポケットに再びしまい込んだ。
｢ビースト・カチャーム65歳、0時34分に乗っていた馬車が事故にあい死亡･･････｣
すると、男の右手から覆うように黒い靄が現れ、それは次第に形を増していった。
死神の鎌だ。
鎌が形を表にすると同時に協会塔の時計の針が0時34分に針が刺さり、街の向こうで人間のざわめく声が響き渡った。
男は鎌を大きく振りかざすと待ち構えていたように馬車に飛びかかった。
そこには車と事故にあった馬車が炎に包まれていた。
｢これまた派手に事故ったな｣
男は底の厚い靴をコツコツと鳴らし近づいて行く。
｢魂の回収に参りました･･････って、もう聞こえてないか｣
振りかざした鎌が丸焦げになっている男性の遺体に突き刺さった。
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