キミは主人公。~短編恋愛集~
親友は嘘つき





___俺、岩城優斗には、仲の良い親友がいる。



「なぁー茉耶ぁー卵焼きちょーだいっ」


高校に入学してから仲良くなった、性格ゴリラ、顔はごく普通の奴だ。


「おん、ええよ。」


性格ゴリラ女、茉耶(マヤ)が、自分の使っている箸で卵焼きをぶっ刺して、俺の口元に持ってくる。

俺は餌付けされる鳥のように、それにパクリとかぶり付く。


「うまぁ」


「おー、お母様に言うとくわ。」


茉耶は、サバサバしてて、
でも興奮すると声がでかくて、
スカート短くてバカそうに見えるけど本当はめっちゃ頭が良くて、

そんで、

皆が恐れるようなパリピグループにも、


「くだらねぇし、いじめみたいなことやめたら?あんたらのせいで空気悪いしさ、あいつのこと嫌いならお前らが出てけよ。」


物怖じすること無く、ハッキリと意見が言える、そんなカッコいい奴。


そりゃ、悪いところあげ始めたらキリが無いし、毎日ムカつくことばっかりで。
出会ってから今日に至るまでの一年半、喧嘩も結構した。


でも、何故か毎回、話さない時間が長くなる程に心にぽっかりと穴が空いたようで

茉耶にしか話せないような愚痴とか悩みとかが溜まっていって

『お前、頑固すぎてついてけない。』
『自分の言うこと全部正しいと思う癖やめた方がいいよ』

と言われ大勢の友達を失ってきたこの俺が、いつも最後には自分から


「茉耶ぁ、ほんと、ごめん…」


と謝ってしまう。

そんな時に謝られたからと言って調子に乗ることもせず、

「私も言い過ぎた。ごめん。」

と謝ってくれるところ。


ほんと、カッコいい奴。




「あ、それ期間限定のピーチティーじゃん。優斗さんや、一口くださいな」



餅みたいなぷくぷくの頬っぺたを膨らませながら、許可もしない内に茉耶が俺の飲み物をもっていく。

一口、と言いながらごくごくほぼ飲むところ、ほんと、キライすぎ…。



だからイラッとして、ちょっとした嘘をついた。
特にこのときは、自意識過剰がいつもより高まってたから。



「そういえばなんだけどさ、俺彼女出来たわ。」


「へぇー、おめでと。」




…でも俺が求めてた反応じゃなかった。



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