キミは主人公。~短編恋愛集~
放課後、いつも茉耶は自分の教室で漫画を読んでいる。
俺は、呼ばれてもないのに邪魔をしに行くのが日課。
同じグループの友達もいつもついてきて、最後には先生を巻き込んでお喋りタイムだ。
放課後先生に呼び出され説教を食らった俺は、気乗りしなかったが、少し遅れて茉耶のいる教室へと向かった。
いつも俺が一番に茉耶の所に行くのに。
教室の前に着くと、中では茉耶の彼氏、俺の彼女出来たカミングアウトの話で持ちきりだった。
「岩城もビックリだけど、茉耶も!いつからよ?」
噂に一番敏感な、サチ子が騒ぐ声が聞こえる。
「あー…いつからだっけ。四年前?」
「え、入学する前から!?そういうことは早く言ってよぉ~」
四年前!?四年、四年か、うん四年!?
うっわ勝ち目無いじゃん。
って、何、勝、ち目って。いやいや俺別に茉耶のこと好きじゃないし。親友だと思ってたのに言ってくれなかったのが寂しいだけだし。
教室に入れずに、扉の横に座り込み聞き耳を立てる。
「てか、岩城は絶対茉耶のこと好きだと思ってたんだけどなー。」
サチ子、それはナイナイ。
俺は性格美人で顔も可愛い人がタイプだし。
「え、それは無いでしょ。優斗のタイプは性格いい子で顔も可愛い子じゃん。」
一枚壁越しのサチ子と茉耶の会話に、俺は頭の中が熱くなって、バンッ!と物凄い勢いで扉を開けた。
「なんで“無い”んだよ!!」
突然叫んだ俺に対して、サチ子と茉耶は目をぱちくりさせながら唖然としている。
「お前だって充分、性格良いしカッコいいし可愛いだろ!!」
イツメン五人が集まる中で、公開処刑みたいな台詞を吐いてしまい、途端に恥ずかしくなり顔が熱くなった。
それと同時に、何故かポロリと涙がこぼれ、俺は逃げるようにバンッ!と扉を閉め、階段に向かって走っていた。