ずっと貴方が怖かった

 



高木くんはその後の話を続けないで、さっと伝票を人差し指と中指に挟んで立ち上がった。



「あ、あの、私、私も払う……」



「いいよいいよ、あらまき、誘われた側なんだからさ、それに学生のお前に社会人の俺がカネ出させる訳にゃいかんでしょ?」

 

「し、社会人……」



「ま、俺の場合、クルマいじれるようになるのが先だったから、進学より先ずは整備士だったんだけど、これから必要だったら開発系の勉強しに行こうとは思ってるけどね」



「暴走族だったんじゃ……」



「は?暴走族?まあ、趣味が一緒だから連中と仲良くしてはいたけどね。それよりさ、あのクルマ、俺が復活させたんだぜ。結構味があるだろ?そもそも俺、ミッションで乗りたかったしさ」



「ミ……ミッション……?」



「マニュアルトランスミッション」



「はあ……」



私クルマのこと、さっぱり知らない。マニュアル……ミッション……インポッシブル?トムクルーズ?そういえば高木くん、トムクルーズに雰囲気似てる。まさに高木くんって顰めっ面してるトムクルーズ。トランスフォーマー……は違うか。




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