生物くんと、私。
「話って何?」

「ごめんね、いきなり呼び出したりして。」

「いや、それはいいんだけどさ。」

前に進む。

この恋は報われなかったけど。

きっと。私の糧になる。

「私、協力できない。」

声が震える。

泣きそうになってきた。

でも、目をそらさずに。しっかりと喋る。

長谷川くんはびっくりしてるけど。

「私、ずっと長谷川くんのことが好きだった。」

「…え?」

「だから、協力なんてできない。」

まるで時間が止まったみたい。

誰もいない教室の時計の音しか聞こえない。

言えた。

ずっと言いたかった、素直な気持ち。

「え、あっと…その…」

「ふふっ。ごめんね、困らせたかったわけじゃないんだ。ただ蹴りをつけたかっただけ。返事ももちろんわかってるからいらないし。私の問題に付き合ってくれてありがとう。」

「いや、ごめん……」

「大丈夫だよ。」

言えてよかった。

こんなに楽になるなんて。

本当はあなたとずっとそばにいたかった。

本当は同じ気持ちだよ、って言って欲しかった。

でも。

それももう叶わないから。

「今まで、ごめん。気づかなくて傷つけたよな。」

ううん。そんなことないよ。

たくさん、笑わせてくれた。

幸せだって思わせてくれた。

それだけで、もう。十分。

「じゃあ。それだけ、だから。」

「おう…」

「ばいばいっ!長谷川くん!」

涙が出そうだった。

ばいばい。

私の好きな人。

よかった、あなたの最後の目に映る私は笑顔の私がよかったから。

泣かないって決めてた。

「これで……良かったん……だ……よね……っ」

気づけば生物室の前に来ていた。

我慢、出来たよね。

この事、聞いてもらいたい。

でも放課後だし、いないかな…

「また?泣いてるの?」

「え?いたの?」

「いるさ、あんたが泣いてるから、帰りづらくなった。」

「ごめん。」

「んで?またなんかあったのか?」

「気持ち。伝えたよ。前に、進むって決めたから。」

「そうか…良く、頑張ったな。」

「ありがとうっ。生物くんの、おかげだよ。」

「お前が頑張ったんだろ。」

生物くんありがとう。

心からありがとうっ!

「よし、もう帰れ。それ以上泣くと余計にブサイクになるぞ。」

「うん、そうする。また、明日ね。」

「おう。」
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