生物くんと、私。
〝ピロン〟

きっ!来たー!

恐る恐る携帯を開く。

『高野?よろしく』

とだけ。ぶっきらぼうに書かれていた。

「なにそれ」

そんなことを言いつつもう私は顔の筋肉が緩んでいる。

我ながら、単純なやつだと思う。

『生物くん、今何してるの?』

『今はバスケ観戦?してるよ』

『なんで疑問形?』

『だってバスケなんて名ばかりで全然してないから』

『生物くんもバスケするんだ』

『俺は見る専門』

なんだかんだあっという間に生物くんのトーク画面が2人の文字で埋まっていく。

生物くん、実はバスケ好きじゃないんじゃないかな。

返信、早いもん。

絶対、する側の方が楽しいのに。

『するほうが楽しいよ?』

って送ろうとしたら

『しない方が楽しいやつだっているの』

って。

なんだ、バレてた。

『バレた?』

『君の言いたいことはなんかわかる』

『それはそれは、どうもありがとう』

時間なんてあっという間にすぎてもう、5時前だった。

『そろそろ切り上げるね。また、連絡してもいい?』

そう。送った。

連絡先交換しなければよかったとか思われてたりしないかな。

返信するの早すぎてだるいとか思われてないかな。

『大丈夫だよ。また暇つぶしの相手になるから。』

ほらまた。

心がくすぐったくなった。

そうやっていつもたわいない事で私の心を振り回す。

最近自分の中でキてる可愛いアヒルが飛び跳ねて喜んでいるスタンプを送って携帯を閉じる。

しまったなぁ。

これはこれで、生物くんに会いたくなったじゃないか。

今、何してるんだろう。
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