生物くんと、私。
第1章

生物くんに出会う前

「千夏、おはよう」

「おはよう、ハル」

子猫の柄があしらわれた可愛いカフェの前でいつものように待ち合わせ。

いつも少し遅れて来るのが幼馴染の山浦ハル。

ハルご自慢の栗色の胸まで伸びた猫っ毛を毎朝丁寧にブローしてるらしい。

遅れるなら早く起きればいいのに、って思うんだけどハルは朝が苦手でこれが限界みたい。

今日は雲ひとつない快晴。

今日のお昼は外で食べよう。

たわいない話をしてるとあっという間に学校に着く。

いつもの話題は決まって恋バナ。

高一の5月。

誰と誰がくっついた、〇〇ちゃんの彼氏は野球球児、だとか。

私、高野千夏にももちろん好きな人くらいいる。

その相手は私の隣の席のあいつだ。

「高野、おはよう」

「お、おはようっ!」

びっくりした。

ロッカーの影から驚かすように顔だけ出し、いたずらっ子のようにはにかむ男の子。

そう、この人が私の好きな人、長谷川太一。

長谷川くんはサッカー部で1年生なのにずっとスタメン、いわゆるエースで、成績優秀、身長も高くてファンも多い私とは真逆な人種だ。

好きだという気持ちを伝えられないまま、7月を迎えてもうすぐで夏休みを迎えようとしているなんて…

これでも何度も伝えようとした、でも、やっぱり関係が壊れるのが怖くて断念。

でもこのままでも幸せなんじゃないかなぁって思ったりもする。

そしたら毎回ハルに怒られるんだけどね。

「後悔しても知らないよ」って。


< 2 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop