生物くんと、私。
でも、クラスで分担して書いたから1人の書くヨーヨーの量は一緒なわけで。

絵が上手いサキちゃんのは大事に大事に表に出す。

そうじゃないとあっという間に無くなるから。

「いいなぁ、私のも誰が選んでくれないかなぁ…」

ボソッと呟く。

ここまで明らかな差が出ると自分でも辛い。

「こんなところでなにしてんの?」

上から声をかけられた気がした。

まあ、これだけ人がいるんだ。

私じゃないでしょ。

「あれ、無視?」

え、違う気のせいじゃない。

そう思って顔を上げる。

「……へ、誰?」

てっきり知り合いだと思っていたのに全然知らない男の子がこちらを見ている。

「なにやってんの?」

「……ヨーヨーを……」

「ふーん、そっか」

てか、すんごく美形。

切れ長の目で、スっと通った鼻筋、赤みがかった茶髪。

きっとモテるんだろうなって顔。

私はこのイケメンに疑問をぶつけてみる。

「……ごめんなさい。どこかで会いましたっけ?」

「ん?」

「いや、あなたが誰なのか分からなくて。」

「あぁ、そっか。俺の名前は中杉照。よろしくね」

「あ、よろしくお願いします。私はたか…」

「あ、知ってるよ。高野千夏ちゃんでしょ?」

「え……なんで」

「さて、なんででしょう。」

「さ…さぁ…?」

「あ、そうだ。ちょっと待っててくれる?」

なんだろう。

こういうのすごく気になる。




しばらくして、男の子を羽交い締めにして戻ってきた。

「お友達ですか?」

そう声をかけると。

男の子がいきなり顔を上げる。

え、この人なんで。

泣きそうな顔をしているの。

「え…えと…?」

「あぁ、俺の友達。吉沢顕季」

「はじめまして、高野千夏です。」

さっき、目が合ったと思ったのにすぐそらされてしまった。

中杉くんが太陽ならこの人は月。

そのくらい真逆な人だな…。

でも…。

なんだかこの人を見ると切なくなる。

…なんでだろう…。
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