生物くんと、私。
そう。

私には、4つ上の兄がいた。

でも、兄は私をかばって事故にあって亡くなった。

わずか、12歳という短すぎる生涯を閉じた。

「え、だから…当事者…ってこと?」

「うん。だから顕季は君に嫌われることを選んだんだよ」

「嫌われるって…。そんなこと…」

「なんか顕季はね、君とずっと前から知ってるんだって」

「それは、お兄ちゃんの時じゃないの?」

「どうも違うらしいよ?」

「じゃあ…いつだろう」

「さぁ、それは知らないけど。顕季はね、昔っから不器用だよ。自分のしたいこと、欲しいものを直ぐに我慢して、それを伝えられない。それはきっと、今もだよ。」

「…ありがとう。今、生物くんってどこにいるかわかる?」

「いや、でも…」

「教えて。お願い。」

「……東総合病院にいると思うよ」

「中杉くん、ありがとう!私ね吉沢君が好き。ずっと言えなくて、怖かったんだ。逃げてたんだ。でも、伝えてくる。」

今行かなきゃ。

吉沢くんは帰ってこない気がした。

「行っておいで」

ありがとう、中杉くん。

待ってて、今、行くから。
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