生物くんと、私。
どのくらい時間が経ったんだろう。

今まで思ってたこと、溜め込んでたことを全て、生物室の人に話した。

「ご、ごめんね、話たくさん聞いてもらって。」

「…いや」

「なんか、スッキリした気がする。」

「それは、よかった。」

「付き合わせちゃってごめんね。」

「俺から言い出した事だし、気にするな。」

「ありがとう」

溜め込んでたもやもやが、どこかえ消えていった。

長谷川くんのことはまだ辛いけど。

「でも、友達とは早く仲直りした方がいいと思うけど。」

「え?」

「素直になるところはならないと、後で後悔しても知らないぞ。」

「後悔…」

「言葉にしなきゃ伝わらないことなんてたくさんあんだ。その好きな男とも、中途半端にするんじゃなくてきちんと蹴りつけろ。そして、前に進めばいいんだ。」

「…そうだね、そうだよね。ハルとはずっと仲良くいたいもん。ありがとう!」

「別に。」

クスッ。

この人、ぶっきらぼうに話すくせに話す内容はとってもあったかい。

この人ともっと。話してたい。

この人と話すの、すごい楽だ。

「ねぇ、あなたってここに来るの多いの?」

「あ?あぁ、ここに大抵いる。」

「授業は?」

「…サボる。」

えぇ、サボってるの…。

「授業についていけないんじゃ?」

「ほぼ、90点超え。」

「う、げぇ…」

「元の出来が違うから。」

嫌味だー、今のは嫌味だー。

「まあいいや、じゃあここに来れば会える?」

「まあ、多分。」

「じゃあまた来てもいい?」

「…別に。好きにすれば。」

「ありがとう!」

「あ、待って、名前、聞いてなかった!私の名前は高野千夏!あなたは?」

「俺は…名乗るほどじゃない。」

「はぁ?いーじゃん、名前くらい、教えてよ!減るもんじゃないし!」

「嫌だね。」

「なんで!じゃあなんて呼べばいいのよ!」

「…適当に呼べばいいんじゃない。」

ムカつく!

名前くらい教えてくれたらいいじゃん!

じゃあ、私も負けてられない。

だっさいあだ名で呼んでやる!

「生物くん!」

「はぁ?」

「教えてくれないなら生物くんって呼ぶからね!」

「別のにしろよ。」

「なら、名前教えて。」

私は折れないからね。

生物室にいつもいるなら生物くんでしょ?

そして生物室から はぁ〜… っとため息が聞こえたと思ったら。

「もう、それでいいよ。」

と、生物くんが折れた。

「分かった。生物くんって呼ぶね。」

「その代わり、条件がある。俺の顔を見ないこと。」

「なんで?」

「…知られなくないこともあるんだよ。」

訳分からないけど、生物くんがいうのなら仕方ないか。

まあ、いずれ見ればいいし。

「いずれも見せないから。」

「え?」

「声に出てる。」

あら、それはいけませんね、バレますがな。

「仕方ない。その条件、のむ。」

「じゃあお前は授業に戻れ。」

「うん、わかった、そうする。」

ずっと話し込んでて気づけば1時間目が終わろうとしている。

「じゃあまたね、生物くん。2時間目は出なよ。」

「おー」

あれは出る気なさそうだな。

まあ、気持ちも楽になったし、いいか。

✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚

これが、私と生物くんの出会い。
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