朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
「さっき女すきって言ってたろうが」
若干声が恨めしくなるのはゆるしてほしい。
嫉妬真っ最中なのだから。
「それは――憧れ、かな? 皆さんの中に、私にはない綺麗なものが、たーくさん、あるから。……流夜くんのことは、世界でひとりだけ、結婚したい意味の、すき」
ですよ?
咲桜も、さすがに俺の気分を害してしまったと思ったのか、そう付け足した。
なんなんだこの可愛い生物は。
また抱き寄せた。するといつもは困惑する咲桜が珍しく、すぐに抱き付き返して来た。
「………なあ、咲桜」
「ん?」
「………」
さっきのテンションどこ行ったと思うほど、今は穏やかな咲桜だ。
「……そういや、絆に電話するのか?」
「へ? なんで?」
「言ってたろ、俺に不埒な真似されたら連絡しろって」
「え? ………な、なんですきな人にキスされてそんな連絡するの!」
泡喰った咲桜は、それを愉快そうに眺める俺を見て閉口した。