朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
「犯罪学者という仕事柄もあるだろうが、流夜は他人に対して冷酷になりきれる。蒼はそれが出来ない」
「………」
「流夜はさ、アメリカで何があって変わったかは知らないけど、留学する前は特に他人を標本(サンプル)としてしか見てなかったからねー。今は大分和らいだみたいだけど」
さ、サンプルって……。その言い分に、レンは口の端を引きつらせた。
結構な言いようだけど、流夜に当てはめるならこれしかないんだな。
「流夜の仕事上は強みになるだろう。が、蒼の方が甘いという言い方も出来るが、優しいという言い方も出来る。そして、流夜の方は強いがゆえにもろいとも言える。
他人が嫌いというのは、他人を拒絶する理由だ。他人を拒絶するのは、他人を受け容れる度量がないこと。そして一人きりだということだ。あえて一人きりを選ぶ人間もいる。
流夜はそれこそ本業上、わざとそうしてきただろう。それぞれ生きてる世界が違うから、どちらが良いとも分があるとも言えないけどな。な? 違うだろ」
「ほー。確かにそうだねー」