朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】


「…………善処します」


「あははー。しばらくは無理そうだねー」


「ケン」


「はいはい。どうぞー」
 

ゼンに軽く睨まれながら、本日最後のコーヒーを出した。


「愛情が全部、報われたらいいのにって思うよねー」


「……」


「………そうだな」
 

報われない恋も愛情もある。だからこそ。


「お互いがいるだけで幸せな恋人って、すごいよね。ゼンとレンみたいにさー」


「お前もだろ」
 

ゼンは素っ気なく返す。


俺は唇の端だけで微笑んだ。
 

色んな過去を知っている。誰も彼も、思いは通ずるばかりではない。


だからこそ思う。


今日見た恋人たちは、本物なのだと。

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