朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】


「生まれてたら……遙音と同い年だったかな。だから龍さん、僕らとは違う意味で遙音が気になっちゃうんだろうね」
 

家族を亡くした遙音先輩を。


「それ以来……龍生さん、恋人とかいないんでしょうか」
 

笑満は哀し気に問う。


「ないだろうね。僕ら、ずっと知ってるけどそういうのはナシ。……光子さんがどれほど大きい存在だったかだよね」
 

恋人を、亡くして。
 

……龍生さんも、うしなった人なんだ……。


「あ、咲桜ちゃんと笑満ちゃんが気にして落ちることないからね? 龍さん、未練がないわけじゃないけど吹っ切れてはいるから」


「あ、はい……」
 

私は小さく肯く。
 

高校生の頃の写真。


在義父さんと龍生さんは同じ高校の出身だ。


龍生さんは実家のある天龍を出て、華取の家に下宿して通っていたそうだ。


龍生さんの隣にはつらつとした、笑顔の可愛い女の子がいた写真を見た覚えがある。


「ひかる」という呼び名の。


「で? ケーキ作ってあげるんだっけ?」

< 128 / 295 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop