朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
「生まれてたら……遙音と同い年だったかな。だから龍さん、僕らとは違う意味で遙音が気になっちゃうんだろうね」
家族を亡くした遙音先輩を。
「それ以来……龍生さん、恋人とかいないんでしょうか」
笑満は哀し気に問う。
「ないだろうね。僕ら、ずっと知ってるけどそういうのはナシ。……光子さんがどれほど大きい存在だったかだよね」
恋人を、亡くして。
……龍生さんも、うしなった人なんだ……。
「あ、咲桜ちゃんと笑満ちゃんが気にして落ちることないからね? 龍さん、未練がないわけじゃないけど吹っ切れてはいるから」
「あ、はい……」
私は小さく肯く。
高校生の頃の写真。
在義父さんと龍生さんは同じ高校の出身だ。
龍生さんは実家のある天龍を出て、華取の家に下宿して通っていたそうだ。
龍生さんの隣にはつらつとした、笑顔の可愛い女の子がいた写真を見た覚えがある。
「ひかる」という呼び名の。
「で? ケーキ作ってあげるんだっけ?」