朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
side咲桜
夏休みも流夜くんは学校での仕事があるそうだ。
――けど、遙音先輩から聞いた話だけど、基本性能が群を抜いている流夜くんは、さほど時間をかけずに学校ですべき仕事は終わってしまうらしい。
そういうときは本校舎の教師室を抜け、旧校舎で私事の方を片付けるという。
藤城の夏休みは、基本的に土日以外総て補講がある。
午前で終わるものがほとんどだけど、一応進学校なので、はっちゃける余裕は生徒にはあまりなかった。
『流夜くん』と知り合いになってから、私は少しずつ勉強に時間を割くようになっていた。
それまでも笑満に勉強を見てもらうことはあったけど、流夜くんがよく『調べなさい』って言うから、調べていたら自然とそれが勉強の時間になっていた。
……流夜くん、策士か。
笑満の指導を受けてケーキ作り挑戦中の私は、流夜くんの誕生日の一週間前になって、やっと要領が摑めた。
料理そのものには慣れているから、一度程度がわかればそのあとは失敗しなかった。
やはり慣れ。そして慣れるまでの努力なのだろうか。
ずっと付き合ってくれた笑満と龍生さんに感謝するしかない。
夜、夕飯の支度や明日ののお弁当の準備も終わって一息ついたとき、スマホが着信を告げた。流夜くんだった。
「は、はい!」
『咲桜、今いいか?』
「うん、大丈夫。流夜くんお仕事は?」