朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
神宮先生が教師室よりも旧館にいることは知っていた。
物好きと言われているけど、蔑視(べっし)されているわけではない。
神宮先生は穏やかで人当たりがいいし、ほかの教師へのフォローも上手い。
でも恩着せがましくもないから、出過ぎず目立たず、といったところかな。
その神宮先生が生徒に手を出した……まあまあ、最初は俺の勘違いだろうと思ったけど、なんでか、相手が咲桜だと納得してしまったというか、しっくりきてしまった。
そんな神宮先生だから、俺は秘密の共有者になってもらうことにした。
脅すわけじゃない。ただ、俺の秘密を未来に繋げるためには、協力者が必要なんだ。
穏やかな気質の神宮先生なら、それも受けてくれるんじゃないかと期待がある。
旧館で待っていると、さすがに少し驚いた顔をしていた。
「どうしました? 弥栄(やさか)先生」
のも束の間、すぐに困ったような微笑を浮かべて問うてきた。
「神宮先生に話したいことがあって。他の人に聞かれると難なことなんで」
「そうですか? 怖いですね、なんでしょうか」