朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】


『あんたは今までに、たくさんの命をすくって、反面、たくさんの命を裁きの舞台に送ってきた。

極刑を受けた人もいる。重い刑を世間から望まれながら、司法はそうしなかった人もいる。あんたの命は、あたし一人には大きすぎるわ』
 

そこまで言われて、あれ? これって振られる前置き? と勘繰って一人冷や汗を流した。


『でも、大きすぎる……愛情も、あたしにくれたわね。今まで、たくさん。降渡。

あんた――あなたの命は、あなた一人では収まりきらないのよ、もう。大勢の命があなたに関わって、影響されている。だから、全部あたしにくれちゃ駄目だと思うの。

半分でいいわ。あたしにくれるあなたの人生は、半分でいい。もう半分は、今まで関わってきた命、これから関わる命のために生きてほしいの。

……責任、っていうやつかしらね。あなたはそれを忘れちゃいけないと思うの。

……あなたは、世界に必要な人よ。あたしの世界に勿論一番必要だけど、あたしが降渡を一番ほしい人だけど、生きているみんなが関わる世界に、あなたは居るべきなの。

……意味、これで伝わってるかしら? 簡単に言うとね? ――もしあたしに万が一があって、あなたより先に、ここを離れることがあっても、すぐにあたしのいるところへ来ようとしては駄目だということを、言いたいの。

……あたしのために生きてくれるって、言ってくれるの、すごく嬉しい。ずっとあなたの一番になりたかったんだから。ずっとずっと、あたしだけの恋人で、夫でいてほしいよ。

……でも、あなたは並外れた大器。……そこはあたしが折り合いをつけるところだから、自分で感情と意志は整える覚悟よ。……生きて。ずっと。あなたが助けた命も、刈り取った命も、忘れないで』

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