朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
泣いていた。絆は。
『あたしが法律の世界に進んだ理由は、降渡だよ。あなたみたいになりたかった。あなたになりたかった、じゃないわよ? あなたになってしまったら、あなたとは一緒にいられない。
……わかってる。あなたや、神宮や春芽と、あたしはステージが違うって。
だからあたし、あんたがあたしをすきだって言ってくれても信じられなかった。戯言とか遊び言葉みたいに聞こえてた。
……でも、あんたは確かにそこにいた。あたしの視界から消えなかった。だから――あんたと並べる場所を探したわ。今はまだ、全然よ。全然足りない。降渡は遠すぎる
。……正直、仕事の地位も中途半端なこの状態で嫁いでいいのかなって、思いもあるわ。
でも――いいのよね? あなたの言葉、本当だって思って。そしたらあたし……あなたのために、あなたより先に死なないって、約束するわ』
すくって来た命も、刈り取った命も忘れるな……。
それは呪縛。自分がしてきたことへの。
『……うん』
忘れない。龍さんに叩き込まれた根性は、俺の芯になっている。
そして今、根が増えた。
命の関わる仕事をホームとするなら、忘れてはいけない。
自分が死にさらしてきた命もあることを。
『……うん。絶対、忘れない』