朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
そういえば、大学の研究機関にいる宮寺先生は、期間限定の講師が終わったあと、母校である藤城の非常勤講師を引き受けたと聞く。
宮寺先生の専門分野は遺伝子学。
笑満が不安そうに先輩を見上げる。
「ほんとになんか投げつけられてるよ、遙音くん」
「……昔っからあんなだ」
……それは哀しいな。
「ちょっと止めてくるわ。あんま五月蠅いといくら旧館でも目立つし。元々宮寺って目新しいから目立ってるし」
先輩がさっと前に出て、旧館の廊下で騒ぐ教師たちに割って入った。
私は傍らの幼馴染を見遣る。
「頼、宮寺先生は?」
「特にふつー」
「……興味あんだね」
特に普通、なんて日本語はない。
普通の中でも特等の位置だと、頼は認めたのだろう。