朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
「……降渡」
龍さんの低い呼びかけに、顔をあげる。
龍さんと在義さんが、同じ表情をしていた。
俺は二度瞬いた。不思議な顔だった。まるで色が抜け落ちたような。
「一応だけどな、これだけは言っておく」
「……愛した人を、間違えるな」
在義さんの言葉に、今度は三度瞬いた。――愛した人を。
「――はい」
間違えない。真っ直ぐの愛情も、ひねた道の愛情も。
……俺の愛情(あい)という感情と意志は、全部全部、絆のもの。
……これはまるっきり人生じゃないから、全部絆のものでも、いいだろう?
「君が一番に結婚かあ。降渡くんの家族代表は龍生でいいの? その筋の人って誤解されない?」
「黙れツラだけ真人間。中身極悪のおめーよりマシだ」
「………」
面だけ真人間て。
……中身極悪……なのは承知しているけど。咲桜ちゃんには言えないよなあ……。
在義さんはため息をついた。