朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
華取さんも二宮さんも、それが本業で領分だ。
笑満ちゃんの親の憲篤(のりあつ)さんと生満子(なみこ)さんは、ごくごく一般家庭の人。
笑満ちゃんが考えるように少し俯いて、俺が声をかけようとしたときに聞こえたのは俺もよく憶えている声だった。
「笑満? 頼くんと一緒に帰ってきたのか?」
――懐かしい声。時間が、時空が一気に引き寄せられる。
背中からかかった声に、あの頃のように振り返った。
そこにいたのは、少し皺の目立つようになった優しいおじさん――笑満ちゃんの、お父さん。
「……遙音くん?」
「っ……」
俺が呼びかけるより先に、名を呼ばれた。
どう――しよう、いやどうしようじゃない。挨拶、挨拶をするんだ。笑満ちゃんと付き合っていると、それを認めてほしいと。それから、お久しぶりですって、まだまだガキだけど、元気にやってましたって、いつも微笑んでいたおじさんに、こんにちは、って――