朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】



「―――っ!」
 

泣きぬれてしまった笑満ちゃんの父、憲篤さんと笑満ちゃんに連れられて、現在の松生家にやってきた。


玄関で迎えたくれた笑満ちゃんの母、生満子さんは、俺を見るなり膝を崩した。


「お、お母さんっ」
 

笑満ちゃんが慌てて生満子さんに駆け寄ると、はっとしたように顔をあげた。


「ごめんね、笑満……今まで言えなかったでしょう」
 

そう言うと、立ち上がって俺の頬に手を当てた。


「大きくなったわね、オト」


あ―――。
 

そうだ――った。最初に俺を『オト』と呼んだのは、俺の母親だった。


母と仲の良かった生満子さんも一緒に『オト』と呼んでいた。


「………はい」
 

俺の声は小さい。


小さく口を噛みしめていないと、唇から泣き出してしまいそうだった。

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