朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
流夜くんの瞳が少し怯えていた。……少しくらい牽制しておかないと。
「今日、一緒にいてくれてありがとうございます」
「……うん」
今日一緒にいられて、明日も朝までここにいられる。
「がんばってよかったあ……」
こぼれんばかりの笑顔が抑えられない。
父さんに土下座した甲斐があったというものだ。
笑満にケーキ作りも教わって、龍生さんにも色々教授してもらって。
本当に自分の幸せは、一人ではいだけない。
桃子母さんが、在義父さんと出逢ってくれてよかった。
母さんが、桃子という人で――
「……咲桜」
流夜くんの指が、そっと私の頬を撫でた。
「あっ、ごめん。その……」
泣くほど嬉しかった。自分の命が、あることを。自分の命を―――
「咲桜。……ありがとう」
腕が背中に廻って抱きしめられた。