朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】


そっと、頬を包む。咲桜は目をきょときょとさせる。


こんなに雪のようで、華のような存在、いたら世界が狂ってしまう。


苦笑。……もう狂っているな。


咲桜に出逢ってから、色々違ってしまった。


だからこんなに生きていることが楽しくなった。


咲桜の存在一つで。そして、将来が続く恋人となったことで。


「――咲桜、いただくか」


「あ、うんっ」
 

空気を変えるように、微笑んでみせた。


手が頬を離れるのにつられたように咲桜も肯いた。
 

咲桜の料理と、ケーキを並べる。


何を思ったのか、咲桜がケーキを一口分フォークにさして、俺の方へ差し出して来た。


「はい! どうぞ!」
 

突然のことに俺が黙ってしまうと、咲桜の顔がカーッと紅くなった。


「ごめんなさい!」


「何で謝る? 何をやりたいかはわかったから、ちゃんとやろうな?」

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