朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】


窺って、安心するか邪魔立てするかの対応策を考えるつもりだったのが、恋人の奇行にうなだれてしまった。


咲桜は同年代の男子にはレベルが高いようだ。当然のことながら、恋愛的意味ではなく。


安心して……いいのか?
 

壁に手をついて考え込んでいる反省ザルそのまんまなカッコを旭葵に目撃され、

『りゅ、流夜……?』と心配そうに声をかけられた。


『うるさい消えろ』

 
一声に伏すと、旭葵は顔を引きつらせた。


『ちょ、流夜、本校舎でそれはマズいんじゃないのか?』


『………』
 

何故か旭葵が隣に立って歩く。やめてくれ。目立ちたくないんだ。
 

しかし罵声を浴びせた相手にそんなことを言われたのは初めてだった。


『……お前いい奴だな』
 

素直に、そう思ってしまった。


旭葵がわけがわからない顔をしていたけど、暴言を吐いてなおかつ心配されたのは旭葵が初めてだった。


吹雪だったら暴言に暴言を返してくる。降渡だったら諌めてくる。宮寺だったら言い合いになる。


……新しい人種と出逢ってしまった。

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