朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】


言って、刹那のためらいもなく咲桜が身を乗り出し――唇が、重なった。


俺、固まった。
 

十秒ほどもくっついたままだったろうか。


「……ど、うですか……」
 

咲桜は火照る頬で、恥ずかしそうな顔で見上げてくる。
 

実のところ、困った。


まさか本当に咲桜からキスしてくるとは思わなかった。


頬か、せめて手にとでも妥協したフリをしようと考えていただけに、真っ直ぐ唇を捉えられたのが嘘のようだった。


やばい、嬉しい。
 

トン、軽い音がして、咲桜の背が背もたれに押し付けられた。


咲桜は「え?」と瞬く。


「上出来。お嫁さん?」


「な? およ――んっ」

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