朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
今度は、俺から距離を詰めた。
ゼロ距離。咲桜との間に隔てもなにもない。
思うまま優しい口づけをする。
咲桜に抵抗の様子はなく、求めれば応(いら)えがあった。
咲桜から力が抜けていくのがわかって、今度は頬や額、瞼にキスを落とす。
開いた瞼の下の瞳は薄ら潤んでいて、これ以上ないほど妖艶だった。
……先ほどの咲桜のヘンな解釈を聞いていなければ、何もしないでいた保証はない。
まだキスを出来るほどの距離を残して、背中に腕を廻した。
咲桜が頬ずりするようにぴったりくっついてきた。
「……咲桜」
「はい……」
声まで潤んで聞こえる。だからそれ以上色香出すな。
「来年も……同じものが、ほしいな」
「……キス?」
「うん。咲桜から」
「……がんばります」
くすりと笑みがこぼれる。
こうやって、未来の約束が出来るようになるなんて。
自分ごとながら信じられない。
「あ……十二時、なるね」