朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】


ふと、咲桜が置時計を見た。


今日が終わる。咲桜の誕生日。


「……来年も、お祝いさせてな?」

 
咲桜の顎に指をかけて、少し上向かせる。まだ潤みのある瞳で咲桜は肯いた。


「あの、ね?」


「うん?」


「私も……来年、キスが、いいなあ、と思ったり思わなかったりするので忘れてください!」
 

咲桜はうわーうわーと熱気を払うようにぶんぶん頭を振っている。


「ん。約束。いくらでもあげるよ」


「いくらでも?」


「ああ。咲桜がほしい分よりもっとしたいくらいだけど?」


「……そうですか」


「そうですよ」


「じゃあ……たくさん、してほしいです」


「――――」
 

求められることの、嬉しさ。

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