朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
少し乱暴な強さで咲桜の顔を引き寄せた。
優しさよりも熱さを感じさせる口づけ。
最初は戸惑っているのがわかった。でもすぐに同じ熱を持つ。繰り返して。
「キス、してほしいんだ?」
咲桜がぽーっと意識がふわふわしているのをわかって、意地悪く訊く。
咲桜はふやけたような瞳で、こくりと肯いた。
「りゅーやくんにキスされるの、嬉しい、です。たくさん、ほしい」
「――――」
……咲桜の意識がまどろみに落ちかけている。
少し焦ったけど、自分がそこまで咲桜の感情を動かせたことに優越感も感じる。
「そっか。じゃあ、たくさんあげる」
何度目かわからないくらいたくさんしているキスを、またする。
ほしいと言ってくれた。それが、俺がほしかった言葉。
咲桜がほしかった。だから、咲桜にも欲してほしかった。
十二時。カチリと針の音。
すっと、咲桜が顔を引いた。にっこり、微笑んだ。