朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
……咲桜の絶対の安心の様子が見えるからだろうか。
咲桜の希望を裏切りたくない、という思いはある。
「どうするかな……」
この前は布団まで運んでも起きなかったから、今日もそうしても大丈夫だろう。
ここまで安全認定されたら手をどうのなんて些末(さまつ)なことと思えてしまう。
……大事にしたいんだ。
このままここにいようか。
咲桜のぬくもりと、幸せを確かにした場所で。
ソファで寝こけるの、俺は日常だからいいけど……。
「……もう少し、見ててもいいかな……」
中学で陸上競技をやっていたからか、咲桜の肌は真っ白ではなく元気な色だ。
柔らかい頬は愛らしい。
「……ずっと、愛しててもいいかな?」
ふにゃっと、咲桜の顔が動いた。応(いら)えのように。
「……うん」
来年も、その次も――。
この時間を、一緒に。
そっと、咲桜の左薬指にキスを落とした。