朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
「もし神宮に不埒なことをされたらすぐに連絡ください。私、女性だけの法律事務所に勤めている諏訪山絆といいます。すぐに神宮を牢獄にぶち込みますので」
「え――」
名刺を渡され、思わず受け取ってしまった。
絆さんは綺麗な笑みを浮かべる。
「在義様には大変お世話になりました。大事な娘さんのお話も何度もうかがっています。今度、さおさんにもお礼させてくださいね」
「え、と――」
返答に詰まっていると――だって牢獄ぶち込むだの法律事務所だの、とんでもない単語が飛び交っている――流夜くんの手が絆さんの死角をついて、私の腕を引いた。
「あまり巻き込むなよ。吹雪、今日はもう大丈夫だよな、こいつら」
「そうだね。咲桜ちゃんが遅くなるとお隣がうるさいんでしょ? 流夜はもう帰っていいよ」
吹雪さんが軽く手を振ったので、流夜くんは私に「帰るぞ」と言ってお店を出た。
そのときには、掴まえられていた腕も離されていた。
慌てて「失礼しました!」と、また頭を下げて流夜くんに続いた。
その背中に呼びかける。