朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
side流夜
「笑満が……」
「松生?」
咲桜はきゅっと瞳を瞑った。
「~~~笑満がいなくなっちゃいます~!」
「は?」
俺が伸ばしかけた手を宙で止めると、咲桜が、がばっと顔をあげた。
目に涙を浮かべて、口を引き結んで睨むように見て来た。
「笑満を遙音先輩にとられました~! 悔しいです~‼」
「………」
呆気にとられた。
……咲桜にそんな感情があったのか。
「笑満が~~~」
わーん、と思いっきり泣き出してしまった。
仕方なく、小さな子にするように背中に腕を廻して抱き寄せ、頭を撫でた。
咲桜は「うう~」とうなっている。
……特に女子同士にあると聞く、友人に彼氏が出来た時の喪失感。
友達をやめたわけではないのに、いなくなってしまうという感覚。