ひだまり
そんな時………部屋へ帰る階段で。

「危ない!!」

たまたま横を歩く彼女に目をやると……

まだ一段残しているのに……真っ直ぐ進もうとしていた。

いつものようにニコニコ笑ってお礼を言おうとした彼女の腕を取り

強引に部屋に連れて行った。

「座って。」

このままここにいたら……

前回の二の舞をして怒ってしまいそうだったから。

お茶を持ってくると言って……一度部屋を後にした。

部屋の外では……

心配そうな四人の姿が……

「先生、唯ちゃんのこと……お願いね。」

「怒りすぎはダメだよ。」

「頼りにしてます。」

「泣かせちゃダメだからね!」

いつもは『唯先生だろ。』と注意するが……

四人の気持ちが分かるから……目をつむった。

部屋に入ると

青白い顔をした彼女が…所在なげにキョロキョロしていた。

平常心、平常心。

何度も心で呟いて、出来るだけ穏やかな声を心がけたのに……

オレの

「先生、顔が青いよ。寝れてる?」に重なった

「すみませんでした。」の言葉。

思わず、深いため息が漏れる。

「ねぇ先生。何に謝った?」

本当は聞かなくても分かる彼女の気持ち。

多分、今煩わせて迷惑をかけたと思ってる。

オレの一言にビクッと肩が揺れる。

また………怖がらせてしまう。

上手く教えようと思うのに…

ガキのようにムキになって…大人の対応ができない自分にイラつく。

「えっと……あの…また迷惑を……」

ほら……やっぱり。

「迷惑?」

「はい。……あの…助けて頂いて。
………お茶も……お時間まで取らせて……」

「オレが怒ってるのは分かるよね?」

「はい。」

「何に対してか分かる?
迷惑をかけられたとか……思ってないからね。」

………………………………………。

長い沈黙。

きっと……何時間待っても……答えなんてでない。

彼女は…周りに迷惑をかけることを嫌い……頑張る子だから。

頼ろうなんて……思ってもいないから。

どんなに辛くても『大丈夫』と自分に言い聞かせる。

頼って欲しいのは……

オレのエゴ。

だから……いくら考えたって……分からない。
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