ひだまり
何とか午前中の仕事をこなし

一休みしようとベンチを探すと……

人気のないハ虫類館の前のベンチが空いていた。

近づくと……一番会いたくて……一番会いたくない彼女が座っていた。

通りすぎるか……立ち止まるか………

頑張った自分へのごほうびに…立ち止まることを選択した。

「先生、一人?」

オレに話し掛けられて…戸惑う気持ちが顔に出る。

可愛いなぁ。

考えてることが手に取るように分かる。

少し意地悪して

「先生、隣いい?」と聞いてみた。

多分、固まって……

それからオレの荷物を見て……「どうぞ」と言うだろう。

「あっ……えっと…」

やっぱり戸惑った。

オレの荷物を見て…

口を開く前に立ち去ることにした。

頑張った彼女に……一時の休憩をあげたい。

「座って下さい。」

彼女にしては強い言葉だったから…

誘惑に負けて……荷物を挟んで座ってみた。

…………………………………………………。

「そんなに見られると、穴が空いちゃうかな?」

冗談にしないと……赤くなってしまう程こちらを見てる。

からかうとまた俯いてしまったが……

何を見てたんだ??

「ロープを……」

どうやら何に使うのか気になったらしい。

子供のような反応に…もう少し話していたいと欲が出て

他愛のない話題を振ってみた。

以外にも…自分から話すのは苦手だが…質問するとすんなり答えてくれる。

緊張がほぐれない彼女に

いつまでもオレのワガママに付き合わせるのも……と思い

再び立ち上がると

「怖いって言うか……緊張します。それに……やっぱり怖いです。
でも…助けて頂いて…本当に感謝してて…
話すのも苦手だから……伝わらないこともあると思うけど…」と

苦手な会話を一生懸命してくれた。

要約すると

怖いし緊張もするが…嫌ってはない。

会話が苦手だから…思いが伝わらないけど…

今回のオレのお節介は、それほど迷惑していない。

………と、少し自分の都合の良い解釈だけど……

そう伝えてくれたと思う。
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