ひだまり
彼女は多分……かなり落ち込んでる。

オレや主任に申し訳ないと………

おまけに……自分を責めてる。

ここに置いたからだと………。

更に、落ち込んだ顔も出来ないでいるはずだ。

だって……こぼした先生が落ち込むといけないから…………。

人のことばかり考えて

心を痛めているはずだ…………。

ホントなら、あれほど丁寧に作ったのに……どうしてくれるんだと

こぼした先生を責めてもいいくらいなのに。



オレの言いたいことを理解してる主任は

「これ、お願い。」とペンダントを渡してきた。

二人の考えは…

作り直すと他の先生に気を使うから

この上にもう一度メッセージを書いてもらう……という判断だ。

「"とても丁寧に作ってくれて嬉しかった"と伝えておいて。
フォローに行くんでしょ?」

訳知り顔の主任に後押しされて……

泣いてないことを祈りながらウサギ組の扉を開けた。

多分…いや絶対……主任もオレの気持ちに気づいてる。

部屋の中は、いつもと変わらない日常だった。

美味しそうなお弁当を広げた子供たち。

その中に……

オレ達の考えたままの様子で、ご飯も食べずに落ち込む彼女。

きっと……この部屋でしか……

こんな顔が出来ないんだろう。

オレに気づくと……またいつもの笑顔を張りつけた。

お昼ご飯の時間だからと…躊躇しないで来て良かったと思った瞬間だ。

オレと主任の気持ちを伝えてペンダントを渡すと…

みるみる大粒の涙が溢れてきた。

さっきの笑顔より数段キレイな泣き顔だ。

なんて……余裕のある思考をしたのは……一瞬だ。

ポロポロ流れる涙を…ただオロオロと眺める。

「えっ……あぁ~。えっと…」

彼女の涙になすすべもなく、固まっていたら

「あぁ~!森先生が泣かしたぁ~」

「園長先生に言ってやろう!」

「女の子をいじめたらダメなのにぃ~」と

口々に責められた。

子供に人気の彼女を…クラスで泣かすと後が怖いと…

身をもって知った。
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