ひだまり
「先生~。何か悩み事はない?」

昨日ベットに入って……何度となくシュミレーションをしたフレーズ。

軽く……明るく……さりげなく。ギリギリまで四人に注意を受けた。

いつもは遅刻ギリギリの梓先生が…誰よりも早く来ていたのには、驚いた。

隣の部屋で……一番良く見てる分、かなり心配なんだろう。

四人の思いも一緒に……

今日は心を鬼にして……彼女の笑顔を取り戻さなくては!



「何でもないです。」

…………想定内の答えだ。

四人が聞いても…この返事ばかりだった。

「オレが見て気になったこと……ちょっと話していいかな?」

食い下がるオレに…あきらめたのか

「…………はい。」と小さな返事が返る。

よし!!

とりあえず、第1関門突破。

直ぐに路肩にバスを止めた。

いつもは前を向いたまま、扉横に座る彼女に話しかける。

たまにバックミラー越しに表情を確認するけど…

目を合わせることはしない。

怖がらせないよう……ささやかな配慮だ。

今日は……あえて体ごと後ろを向いた。

逃がさないアピールだ。

小動物のような彼女は……ますます小さくなった。

「オレが見る限り……唯先生って…佐藤さんと仲が良いよね?」

「いえ!そんなことは…。
佐藤先生はお話しが好きな方なので……黙って聞く私が丁度良いみたいです。」

「まぁ~そうだね。
先生は…ニコニコ聞いてくれるから、嬉しいと思うよ。」

思わず出た嫌味も…彼女は気づかない。

「最近……佐藤さんのこと、避けてない?
オレには避けるって言うか……怯えて逃げてるように見えるんだけど。
これは、個人の問題っていうより……園の問題なんだよね。
仕事場で人間関係が大事なのは……先生にも分かるでしょう?」

上司のオレが、園の問題だと言うと……

彼女は逃げれない。
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