ひだまり
ちょうどその時、後ろの窓が開いた。

彼女のクラスの窓が。

「あの……先生。」

普段、まず自分から話しかけてこない彼女。

おまけに、この前の一件以来、目も合わなくなった。

そんな彼女の呼び掛けに

さっきの話しを聞かれたか?とヒヤリとしたが…

オレの予想に反して

「今日はとっても寒いですけど……風邪をひかれませんか?
手が真っ赤だから。」

えっ?オレの心配???

手が真っ赤って…………

思わず顔の方が真っ赤になりそうだ。

ニッコリ笑って近づくと

「あの……。…………………。
少しは…寒さがしのげるかもしれないので…………
良かったら……使って下さい。」と差し出されたのは………

さっきまで彼女がはめていたゴム手袋。

可愛いなぁ~

話しかけるのも嫌なはずなのに

寒そうなオレが気になって、手袋を貸そうとするなんて。

……………さっきカラオケを誘われた時

戸惑ったのは…彼女の事……。

せっかく四人と行くカラオケに、オレがいたらリラックス出来ないと思って。

………やっぱり……断ろう。

こんな可愛いことしてもらったんだからな!

今年最後だからと…ちょっとイタズラ心が出て

「先生、手を貸して。」

掌を合わせて……

「ねっ!小さいでしょう?
先生の手袋は、オレには無理だよ!
でも、嬉しかった!ありがとう。」

………………しまった。

何気なくやったけど……………彼女にはダメな行為だった…。

ホンの2週間前に……アイツに触られて……嫌な思いをしたのに……

焦ったオレは…

「だったら、こっちをちょうだい!」

彼女の手にしていたカイロをもらって……

逃げるようにバスに戻った。
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