ひだまり
「私……たんぽぽ幼稚園でお世話になっております。森と申します。
唯さんは………」

「えっ!!先生???えっ??」

「あぁ~。先生か……良かった。
お家の人が出たらどうしようかとドキドキしてたんだ。
今、大丈夫?
さっきかけたら留守だったから…。」

「はい…あっ……えっと…。
あっ!……大丈夫です。………えっと……あの……
買い物に行ってて………えっと……」

「良かった、やっぱり先生だ。
いつものテンポに戻ったね。
買い物から帰ったばかりだったら…荷物があるんでしょ?」

「あぁ~はい。あっ……いえ。……………………………。」

……………………………………。

「先生?唯先生??」
……………………………………。

あれ?

もしかして…………

「お~い、先生~。聞いてる~?」

……………………………………………。

やっぱり…………。

彼女はどうも、自分の世界で考え事を始めると…

…………聞いてない。

おまけにこう言う時は…………ろくでもないことを考えている。

多分今も……

『何かやらかして…電話をもらってしまった』とか

『また怒らせた……』とか、いらないことばかり考えてるはずだ。

「唯せんせ~。聞いてますかぁ~」

何度目かの呼びかけに

「あっ!!はい。聞いてます。」

絶対ウソじゃん。

笑いを堪えて

「携帯にかけ直していい?
番号教えるから…先生がかけてくれる?
難しいなら、オレがかけるけど。」と聞くと。

「だったら……先生にお願いします。
自分からかけるのは……勇気がいるので………」って。

やっぱりね!多分、こう言うって思ったよ。

彼女らしい返事だなぁ~

絶対オレが取るって分かってるのに………。

おまけに、"勇気がいる"って……『恥ずかしいので……』って答えると思ったのになぁ

相変わらず……予想を越える答えが帰ってくる。

「だったらかけ直すね。勝手に登録しないから、安心してね!」
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